ホーム > 座繰り > カイコの糸ができるまで                      


カイコの糸ができるまで

このページでは、当館の糸づくりをご紹介します。

■ 養蚕(ようさん)

人の手で飼育する蚕を「家蚕(かさん)」、自然界にいる蚕を「野蚕(やさん)」といいます。ここでご紹介するのは家蚕です。農家で育てる蚕は、卵から孵って約25日後に糸を吐きはじめます。蚕は3日ほどかけて繭をつくり、その中で蛹になります。当館では年2回(春蚕・晩秋蚕)飼育します。蚕期別の繭の質は、もっとも上質なのは春蚕だと一般的に言われます。次は晩秋蚕です。しかし、風土や飼育環境によっても違いがでるので、その限りではありません。蚕は手をかけるだけ、良い繭をつくります。

■ 糸づくりの前に① 「繭の入荷と殺蛹」

蚕は糸を吐いてから約12日後に成蛾になります。成蛾はだ液で繭を溶かして外へ出ます。だ液で濡れた繭は繊維の質が変化して、生糸の原料としては使えなくなります。そのため工場に出荷する生繭はすみやかに熱風乾燥されます。これを殺蛹(さつよう)といいます。当館ではご依頼があれば、生繭のうちにつくる「生挽き」をします。通常は冷凍保管です。当館の冷凍は、急激に凍らせますので生繭に近い品質です。

■ 糸づくりの前に② 「繭の選別」

糸をつくる前には、原料の繭を選別します。上質の繭を上繭(じょうけん)といいます。厳選しないと上質な生糸はできません。しかし、蚕を多く飼うと、当然品質の落ちる繭も生産されます。それは選除繭(せんじょけん)といいます。これもさまざまな原料になります。当館では節のある玉糸をつくるときに利用します。当館の玉糸は、上繭にこれらの繭をブレンドします。その方が糸に趣が出ます。選除繭も、当館では大切な原料です。

■ 繰糸(そうし)

繭を湯で煮て長い繊維としてひきだす糸を生糸(きいと)といいます。当館の特徴は、工場で生産しないような生糸づくりです。工場の生糸は21 デニール(繭7粒くらい)など、髪の毛のように細い糸です。この生糸で着尺をつくる場合は、例えば21デニールの生糸を撚糸業者のところで8本そろえて(21D×8本=168D)太くして使います。上記の例だと、当館では繭56粒から繭糸を一気にひいて1本で168デニールの太さをつくることができます。総合の糸の太さは同じでも、繰糸方法や加工により糸の風合いは変わります。これは一例で、当館では21 デニールより細いものから繭100粒を一気にひいて1本の太い生糸をつくることもします。そして、群馬の座繰りといえば 節のある玉糸です。自家織物を織るために農家の女性によって連綿とつくられてきた素朴で生き生きとした糸です。この糸は座繰りのひき手によって糸の表情が変わります。節が多いと糸扱いが難しいものもありますが魅力的です。

■ 揚げ返し(あげかえし)

繰糸した生糸を巻き直すことを揚げ返しといいます。日本の座繰りは、濡れた生糸を小枠に巻きます。小枠に巻いたまま乾くとセリシンが固まり生糸がほぐれづらくなりますから、再度、他のものに巻き直して扱い良くします。大枠に巻き直した生糸は、綛(かせ)という輪っか形態の束になります。

■ 撚糸・精練の加工

生糸は、繭に含まれるセリシンという糊のような蛋白質でコーティングされてまとまっているだけの状態です。そのため、セリシンを取り除くと繭糸がバラバラになり毛羽立ち、染織がしづらくなります。先染織物(糸の段階で染めをおこなってから織るもの)の場合は、まず生糸に撚りをかけることが多いです。この加工をおこなうと糸のバラけが減り、糸使いが良くなります。撚り回数や撚りの種類によって布の風合いを変化させることができます。当館の撚糸は、片撚りと諸撚りが主です。撚糸回数は相談して決めます。精練はセリシンを取り除く加工です。この加工により、麻のように張りのある生糸は艶と柔らかさのある絹糸になります。精練も練り歩合で布の風合いが変わります。当館の精練は、酵素練りです。

■ お客さまのもとへ

以上の工程で当館の絹糸はつくられます。

当館で精練加工までおこなった絹糸は、すぐに糸染めに入っていただけます。

 

座繰り糸の注文方法については、

ご注文について」へ。